8.聖なる詩人の島
嵐に巻き込まれ、意識を失い漂流していたミーシャは、サラサとイリオス、カーラの聖域である詩人の島レスボス島に流れ着き、介抱される。
回復したミーシャは、フィリスに連れられ、詩人ソフィアの元を訪れる。
ソフィアはミーシャに語る。
貴方が見てきたものも世の真実。
不条理ばかり訪れる嫌な現実。
しかし世界はそれだけではないのよ。
投げ出したくなったとしても、人間に運命の糸を紡ぐ事はできない。
ならば全てを、己が運命をも愛し、誰よりも強かに美しく世に咲き誇る女になりなさい、と。
この辺りが遊女にまで支持される聖女の言葉らしい。
ソフィアはミーシャを一目見て、彼女の不思議な力を見抜き、彼女が生きる道と術を示してくれたのだ。
そんな聖女にも、かつて愛した男がいた。
しかし彼は今は彼岸へ。
9.遥か地平線の彼方へ
一方、エレウは一人の詩人と行動を共にしていた。
詩人の名はミロス。
ミロスはエレウに創世の三楽神の話を始め、様々な話を語り聞かせる。
しかしエレウはそんな一度に言われても覚えられないと、半ば投げやり。
しかし老詩人は、楽しげに笑うのだった。
エレウは、再び離れ離れになってしまったミーシャを探していた。
彼女を探すままに、ある山里へたどり着く。
そこには、還らざる幸せだった季節が、幼き日々の残照がまだ残っていた。
そして二つ並んだ野晒しの墓標を見つける。
葬ったのは誰だ…。
父と母の墓の前で泣き崩れるエレウ。
老詩人は彼に慰めの言葉をかけ、自らの今後の行き先と、子弟の解消を告げる。
友よ、お主はお主の地平線を目指せと。
困った時はレスボス島を訪ねよと師匠。
旧き友が力になってくれるだろう。
しかしマケドニアとトラキアは今危険な情勢であるから、戦を避けるには海路を行くと良いだろうと助言をくれる。
エレウセイアは恩師と別れ、聖女を尋ね、歩みを進める。
一方その頃。
アナトリアの武術大会でオリオンが覇者となった話が駆け巡る。
しかも彼の出生の秘密の噂つき。
蝕まれし日の忌み子だからと捨てられた王子様だと言う噂。
アナトリアで武勇を上げた彼が、この噂を聞いたらどう思うだろうか。
10.死せる者達の物語
東方防衛同盟に参加したアルカディア軍は、女王アレクサンドラ率いるアマゾンと戦端を開いていた。
見事アレクサンドラを打ち負かしたレオンティウスは、殺せと言う彼女の訴えを、女を貫く槍は持ってはおらぬと退ける。
その返しが気に入ったアレクサンドラは、いずれレオンティウスを手に入れると宣言。
しかし戦火は世界を駈け廻り、人々は翻弄される。
そして季節は巡って行く。
エレウは懐 かしきあの頃を想っていた。
ずっと一緒にいようと約束したミーシャ。
人間は何に従うべきで、何を探すべきなのか。
さよならはまだ言ってない。
また二人は出逢えると信じて、君を今も傍に感じている。
泣き虫だった兄 少年が剣を取るならば、
お転婆だった妹 少女は楯を取るのか。
スコルピオスは野心を燃やしている。
レオンティウス、貴様さえ生まれてこなければ。
世界の王になるのはこの私だ!
若本舌好調w
世界は戦に明け暮れている。
奪い合い、憎しみ合い、血を流し続ける。
レオンティウスは思う。
我等は今、何と戦うべきで、何を守るべきか。
11.星女神の巫女
ミーシャはソフィアの助言もあり、アストラで星を詠む巫女として過ごしていた。
ある夜空の星を、彼女は詠む。
嘆くのは獅子宮、これはレオンティウスで、揺れる双子宮はエレウ、そして堕ちる乙女宮はミーシャを表しているのではないかと。
そしてミーシャはエレウを思う。
必ず、再び逢える日が来ると信じて。
そんなある夜、星女神殿に招かれざる兵装の客が。
恐らくスコルピオスの手の者。
自らの野望成就ため、神への供物に巫女を差し出すつもりなのだろう。
神域の者はこの狼藉に抗議するが、敵は無関係なその者達を巻き込もうとする。
ミーシャは選択を迫られ、自ら敵の手に堕ちる。
ごめんね、エレウ…。
誰かを犠牲にしてまで、私は運命に抗えない…。
「ミーシャ!」
フィリスの悲痛な叫び声が、星空に響く。